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食物アレルギーコラム ③小麦アレルギー


みなさんこんにちは。ヒガです。
まだ5月であるにもかかわらず、暑くなってきましたね。
身体が暑さに慣れていない時期なので、大丈夫だろうと油断せずこまめな水分摂取を心がけましょう。
今回は、小麦アレルギーについてまとめてみようと思います。


・小麦アレルギーの頻度、自然経過

小麦アレルギーは卵・牛乳に次いで3番目に多い食物アレルギーであり、日本の0歳の乳児の約25人に1人くらいは小麦アレルギーがあるとされています。
離乳食で初めてうどんやパン粥などを食べたときに、蕁麻疹などが出て小児科を受診され、診断されるケースが多いように感じます。
年齢に伴い食べられるようになる(耐性獲得)傾向があり、報告によってばらつきがありますが、3歳頃で2割くらい、6歳頃で6~7割くらいのお子さんが耐性獲得できるようです。


・アレルゲンとしての小麦の特徴

小麦は基本的に加熱加工されて食べられるので、卵・牛乳のように加熱の有無でアレルゲン性が変わることは考えられていません。
小麦に含まれるタンパク質のなかで、グルテンが特にアレルギーに強く関連しています。
さらに、グルテンに含まれるタンパク質の一つであるω-5グリアジンは、小麦アレルギーを調べる血液検査の項目にも含まれており、小麦アレルギー診断に欠かせないタンパク質となっています。
ω-5グリアジンに対するアレルギー反応が強い(血液検査でω-5グリアジンの特異的IgE値が高い)お子さんほど、小麦アレルギーの可能性が高く、また耐性獲得しにくいことがわかっています。


・小麦加工品についての知識

パン類やパスタ類に比べて、うどんは含まれている水分の割合が多く、その分小麦タンパク質の割合は少ないため、多く食べられる傾向にあります。
ゆでうどん100g(1/2玉)を食べられると、食パンならだいたい8枚切りの1/2枚(20g)、ゆでパスタならだいたい50g食べられます。
醤油・酢・味噌については、醸造や発酵の過程で小麦タンパク質がほとんど分解されているため、小麦アレルギーをもつお子さんでもほとんどの場合は摂取可能です。
コンソメも微量の小麦を含みますが、重症の小麦アレルギーでなければ食べられることが多いので、主治医の先生と相談しましょう。


・小麦以外の麦類との関連

大麦・ライ麦はグルテンを含むため、小麦アレルギーと交差反応を起こすことがあるため、必要に応じて食物経口負荷試験などを行い、食べられるかどうか判断する必要があります。
特に大麦は食品への表示義務がなく、原材料の表記も押し麦、もち麦、丸麦、はったい粉などさまざまなものがあり、注意が必要です。
麦茶については、大麦が原材料であるものの、タンパク質がほとんど抽出されないため、小麦アレルギーのお子さんでもほとんどは安全に飲むことができます。
オート麦やハト麦(燕麦)はグルテンが含まれておらず、小麦との交差反応性が小さいため、小麦アレルギーのお子さんでも食べられることが多いので、主治医の先生と相談しましょう。


・食品表示について

麦芽糖は大豆やトウモロコシが原料のものが多く、小麦が原料のものは「小麦を含む」と記載があります。
大豆やトウモロコシが原料の麦芽糖であれば問題なく食べられますが、大麦を原料とする麦芽糖の場合は原料の表示義務もないため注意が必要です。
麦芽エキスについては大麦タンパク質が含まれていることが多く、大麦アレルギーのお子さんが食べるとアレルギー症状が出てしまう可能性があります。
市販の米粉パンには小麦グルテンが添加されていることがあるため、食品表示をよく確認するようにしましょう。


・特殊な食物アレルギー:食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)

FDEIAは、原因の食物を食べたあとに運動をすると強いアレルギー症状を引き起こす特殊な食物アレルギーです。
食べただけでは発症せず、また運動をしただけでも発症しないのが特徴です。
原因となる食物は小麦が最多で、全体の6割くらいを占めており、その後は甲殻類、ソバと続きます。
初めて発症する年齢は10歳~20歳くらいの方が多く、頻度は中学生で約6000人に一人くらいです。
学校の給食後の体育の授業中などに起こることが多いです。
診断のためには食事と運動の時間的関係が重要ですが、原因がはっきりしないことも多く、運動中に急なアレルギー症状があったときには、FDEIAの可能性も考えて医療機関で検査して原因をはっきりさせる必要があります。
小麦が原因のFDEIAの場合は、小麦タンパクの一つであるω-5グリアジンが特に発症に関わっているとがわかっています。


・その他の知っておくべきこと

小麦アレルギーと時々まぎらわしいものとして、経口ダニアレルギー(パンケーキ症候群)があります。
これは、ダニアレルギーのある方が小麦粉に混入していたダニの成分を食べることでアレルギー症状を起こすものです。
常温で保存した小麦粉ではダニが繁殖してしまう可能性があるので、小麦粉は開封後になるべく早く使い切るようにして、保存する場合は密封し冷蔵庫で保存することが大切です。


・おわりに

すべての食物アレルギーに通じることですが、食物アレルギーの発症や悪化を防ぐためには、お肌の湿疹のケアがとても大切です。
お肌の湿疹に食べ物の成分が付着してしまうと、人体の免疫システムがその食べ物を悪いもの(アレルゲン)と認識し、その結果アレルギー反応を起こしやすくなってしまいます。
特に0歳の乳児期はお肌のバリアも未熟で湿疹ができやすく、食べ物を上手に食べられずにお肌に付着しやすいので、お肌のガサガサや赤みをそのまま放置せず、保湿をしっかり行い、良くならない場合は早めに小児科や皮膚科を受診して湿疹ケアを始めて、食物アレルギーを予防・改善させていきましょう。

ではでは、今回はこのへんで。