みなさんこんにちは。ヒガです。
ここのところ寒い日と暑い日がかわるがわるやってくるようで、服装の調節が難しい季節ですね。
4月から新学期・新生活が始まった方も多く、ゴールデンウィークあたりでちょっと生活に慣れてきて緊張がほぐれてきた途端に、風邪を引いたり体調を崩したりする方が多くなる印象です。
休める時にはしっかり休養を取って、服装もこまめに変えて体調管理に気をつけて過ごしていきたいですね。
さて、前回の卵アレルギーに続いて、今回は牛乳アレルギーについてまとめてみようと思います。
・牛乳アレルギーの頻度、自然経過
牛乳アレルギーの多くは0歳の乳児期に発症し、小児の食物アレルギーのなかでは卵アレルギーに次いで2番目に多いとされています。
0歳の子どものうち、1割弱くらいで牛乳アレルギーがあります。
乳児期に発症した牛乳アレルギーのお子さんのうち約3割が3歳までに、約8割が6歳までに、問題なく牛乳を摂取できるようになる(耐性獲得)と言われています。
生後間もなくの間だけ粉ミルクを飲んでいて、その後しばらく母乳栄養だけで過ごし、生後6ヶ月頃に久しぶりに粉ミルクを飲んでみると蕁麻疹が出たというお子さんを、小児科では時々経験します。
数ヶ月ぶりに粉ミルクを与える場合には、少量ずつ様子を見ながら再開するのが安全です。
・アレルゲンとしての牛乳の特徴
多くの牛乳アレルギーの原因となっているのは、牛乳中のカゼインというタンパク質です。
カゼインは加熱による影響を受けにくいタンパク質であり、卵と違って加熱調理してもアレルギーの出やすさはあまり変化しません。
一方、牛乳アレルギーのお子さんのなかにはβラクトグロブリンという別のタンパク質に強く反応している方もおられ、こちらは加熱により変性してアレルゲン性が大きく低下するため、加熱調理すると症状なく食べられる可能性があります。
また、小麦と混ぜて加熱調理するパンやマフィンでは反応性が低下することがわかっており、牛乳そのものよりも多く食べられることがあります。
・アレルギー用ミルクについて
通常の粉ミルクは牛乳を原料としているため、牛乳アレルギーのお子さんはアレルギー用ミルクで代用する必要があります。
アレルギー用ミルクには、牛乳タンパクを分解して調整された加水分解乳(分解が弱い方から順に、ミルフィー・MA-mi・ニューMA-1)およびアミノ酸乳(エレメンタルフォーミュラ)、大豆を原料とした調整粉末大豆乳(ボンラクト)があります。
加水分解乳は、分解が強ければ強いほどアレルゲン性が低下し安全になりますが、その分だけ味や匂いが悪くなります。
アミノ酸乳はアレルゲン性がなく安全ですが、独特の風味があり、飲みにくい場合があります。
調整粉末大豆乳は大豆が原料なので味も良く、牛乳アレルギーでも問題なく飲めますが、大豆アレルギーも持っているお子さんは飲めませんので注意が必要です。
・牛乳除去に伴うカルシウム不足について
牛乳は優れたカルシウム源であり、牛乳やミルクを除去するとカルシウム不足になりやすくなります。
牛乳の代替食品としては豆乳がよく利用されますが、豆乳に含まれるカルシウム量だけでは不十分であり、アレルギー用ミルクのほうがカルシウム源として優れています。
アレルギー用ミルクは味わいが独特なので、完全母乳栄養であっても、断乳後に備えて生後半年頃までの早い時期から少しずつ飲み慣れておくことをオススメします。
離乳食が始まった後は、カルシウムを多く含む食品も積極的に取り入れていくようにしましょう。
・牛乳加工品についての知識
ヨーグルトは牛乳とほぼ同量のタンパク質を含み、アレルゲン性が一緒なので、ほぼ同じ量を摂取することが可能です。
例えば、牛乳50mL程度を飲めるのであれば、ヨーグルトも50g程度まで食べられます。
乳酸菌飲料に含まれる牛乳タンパク質は牛乳の1/3くらいなので、30mLの牛乳を飲めているのであれば、乳酸菌飲料1本(65~80mL程度)を飲むことができます。
バターは大部分が脂肪であり、含まれる牛乳タンパク質は牛乳の1/5くらいなので、5mL程度の牛乳を飲めているのであれば、1かけ程度(10g)のバターの使用が可能です。
脱脂粉乳やチーズは牛乳タンパク質を濃く含んでおり、アレルギー症状が出やすく注意が必要です。
・食品表示について
乳糖は牛乳から生成された二糖類であり、牛乳タンパクはごく微量しか残存しないため、牛乳アレルギーの方でも基本的には摂取可能ですが、重度のアレルギーの場合は症状が出てしまうこともあるので、主治医とよく相談しましょう。
牛乳と紛らわしい食品表示として乳化剤、乳酸カルシウム、乳酸菌、カカオバター、ココナッツミルク、乳酸などがありますが、これらはすべて牛乳を含みません。
ただし、乳酸菌飲料は牛乳を発酵させた食品であり、牛乳タンパクをしっかり含むので注意しましょう。
・特殊な食物アレルギー:新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症
卵アレルギーのまとめでもお話しした新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症は、むしろ牛乳によって生じることが最多です。
具体的には、新生児期・乳児期に飲む粉ミルクが原因で、嘔吐・下痢・血便などの消化管症状が出てきます。
蕁麻疹などの摂取直後に出やすい症状(即時型症状)と比べて発症に時間がかかり、数時間後の発症や、長い時は数日経ってから発症することもあります。
重たい症状になると、脱水の進行や血圧が下がるショック症状に至ることもあり、注意が必要です。
また、ごくまれに母乳でも発症することがあります。
対応はアレルギー用ミルクへの切り替えや、母乳が大丈夫であれば母乳栄養の継続などが基本となります。
成長とともに治りやすいことがわかっており、多くは2歳ごろまでに問題なく摂取できる(耐性獲得)ようになります。
・その他の知っておくべきこと
牛肉には牛乳と共通のタンパク質である血清アルブミンが含まれていますが、血清アルブミンは加熱によりアレルゲン性が失われるので、加熱調理した牛肉の摂取については牛乳アレルギーの方でも問題ありません。
牛乳を原料とした化粧品、入浴剤、石鹸などは、使用により湿疹などの症状が出てしまう可能性があるので、牛乳アレルギーの方は気を付けましょう。
・おわりに
すべての食物アレルギーに通じることですが、食物アレルギーの発症や悪化を防ぐためには、お肌の湿疹のケアがとても大切です。
お肌の湿疹に食べ物の成分が付着してしまうと、人体の免疫システムがその食べ物を悪いもの(アレルゲン)と認識し、その結果アレルギー反応を起こしやすくなってしまいます。
特に0歳の乳児期はお肌のバリアも未熟で湿疹ができやすく、食べ物を上手に食べられずにお肌に付着しやすいので、お肌のガサガサや赤みをそのまま放置せず、保湿をしっかり行い、良くならない場合は早めに小児科や皮膚科を受診して湿疹ケアを始めて、食物アレルギーを予防・改善させていきましょう。
ではでは、今回はこのへんで。