今回は、卵アレルギーについてまとめてみたいと思います。
・卵アレルギーの頻度、自然な経過
卵アレルギーは、子どもの食物アレルギーの原因で最も多いものです。
日本の0歳の子どもの約3割に何らかの食物アレルギーがあり、そのうち約半分の子どもが卵アレルギーを持っています。
つまり、0歳の子ども全体のうち1~2割が卵アレルギーを持っていると言えます。
一方、卵アレルギーは年齢とともに治りやすい食べ物としても知られており、0歳時に発症した卵アレルギーは、3歳までに約3割が、6歳までに約6割が食べられるようになる(耐性獲得)と言われています。
最近の研究で、食物アレルギーを発症した子どもでも、その原因食物を症状なく食べられる範囲で食べ続けていくことにより、早期に耐性獲得し食べられるようになることがわかってきています。
しかし、食べる量が多すぎると強いアレルギー症状が出てしまうリスクもあるため、その見極めが重要となります。
明らかに卵を食べたことが原因でアレルギー症状(発疹、嘔吐、激しい咳など)が出た場合は、無理に卵を食べ続けさせようとせず、必ず小児科に相談するようにしましょう。
安全に食べられる量を確実に確認するためには、病院でアレルギーが疑われる食べ物を実際に食べてみる食物経口負荷試験が必要な場合もあります。
・アレルギーの原因としての卵の特徴
卵には卵白と卵黄がありますが、アレルギー症状を生じやすいのは卵白です。
卵アレルギーがあっても加熱した卵黄は食べられることが多く、離乳食で卵の摂取を開始する際にも、生後5~6ヶ月頃から、まず加熱した卵黄から食べ始めることが推奨されています。
この際、加熱の仕方が重要で、具体的には沸騰したお湯で20分しっかり固ゆでしたゆで卵から、1時間以内を目安に卵黄と卵白を取り分けましょう。
ゆで卵をそのままにしておくと、卵黄に卵白成分がどんどん浸透していくため、卵白成分による思わぬアレルギー症状を生じてしまう可能性があります。
初めは耳かき1杯程度の量から始めて少しずつ増やしていき、生後9~10ヶ月頃から加熱卵白も同様に耳かき1杯程度から始めて増やしていくのが標準的な進め方になります。
卵は加熱・加工によりアレルギー症状の出やすさが大きく変わる食材です。
具体的には、生に近い低加熱ほど症状が出やすく、しっかり加熱するほど出にくくなります。
低加熱の卵を含む加工品の代表的なものには、マヨネーズ、プリン、アイスクリーム、茶わん蒸し、卵ボーロ、溶き卵をゆがいた料理(どんぶり、卵スープなど)があります。
また、巻きながら焼いて作る一般的な玉子焼きも、鉄板に面していない内側が低加熱となりやすく、注意が必要です。
これらの低加熱卵加工品は、しっかり加熱した卵を十分に食べられるようになってから、少しずつ始めていくようにしましょう。
・特殊な卵アレルギー:新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症
例外として、特殊なアレルギーとして、新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症があります。
これは一般的なアレルギーとは違うメカニズムで生じ、以下のような特徴を持ちます。
①卵白より卵黄で発症しやすい
②嘔吐や下痢や血便など胃腸症状で発症する
③食べてから1~4時間、長いときはさらに数時間後に症状が出現する
④皮膚や呼吸の症状は出ないことが多い
離乳食で卵黄を始めた後に、気になる症状がある場合には、無理せずに小児科を受診して相談しましょう。
・その他の知っておくべきこと
お菓子などによく含まれる卵殻カルシウムは、ほとんど卵タンパク質を含まないため、卵アレルギーがあっても、基本的には食べても大丈夫です。
卵アレルギーでは、ウズラ卵やアヒル卵にもアレルギー症状が出ることが多く、注意が必要です。
鶏肉や魚卵については卵アレルギーとの交差反応性はないので、卵アレルギーだからといって除去する必要はありません。
・おわりに
すべての食物アレルギーに通じることですが、食物アレルギーの発症や悪化を防ぐためには、お肌の湿疹のケアがとても大切です。
お肌の湿疹に食べ物の成分が付着してしまうと、人体の免疫システムがその食べ物を悪いもの(アレルゲン)と認識し、その結果アレルギー反応を起こしやすくなってしまいます。
特に0歳の乳児期はお肌のバリアも未熟で湿疹ができやすく、食べ物を上手に食べられずにお肌に付着しやすいので、お肌のガサガサや赤みをそのまま放置せず、保湿をしっかり行い、良くならない場合は早めに小児科や皮膚科を受診して湿疹ケアを始めて、食物アレルギーを予防・改善させていきましょう。