今年ももう終わりが近づいてきましたね。
12月はクリスマスや年末年始と楽しいイベントがたくさんあり、ウキウキしている方もおられると思います。
一方で、朝の冷え込みが一段と辛くなる時期でもあり、寒さのあまり布団から出たくなくなる季節でもあります。
でも、お子さんが朝なかなか起きられないときには、何か他に原因があるのかも?
ということで、今回は「起立性調節障害」についてのお話です。
「起き上がったとたんに頭が痛くなったり、気持ち悪くなったりする」
「ずっと立っていると、フラフラしてきたり、吐き気がしたりする」
「朝は調子が悪いけど、昼を過ぎると元気になる」
「休日は元気だけど、平日に限ってしんどくなる」
こんな症状に、心当たりはありませんか?
もしかすると、それは「起立性調節障害」のサインかもしれません。
起立性調節障害とは、体の血液の流れを調節している自律神経がうまく働かなくなることによって起こる病気です。
急に座ったり立ち上がったりすると、体の中の血液は、重力によって足の方に流れようとするので、脳に流れる血液が減ってしまいます。
このとき自律神経が働くことで、足の血管をぎゅっと締めたり、心臓の脈を増やして血液をたくさん送り出すようにすることで、脳の血流を保ってくれます。
自律神経がうまく働かなくなると、脳の血流が減ってしまい、頭痛、吐き気、だるさなど様々な症状が出現します。
自律神経の働きは、朝が一番弱く、昼から夜にかけて強くなるので、特に朝の症状が目立ちます。
小学校高学年から中学・高校生にかけては、思春期で身長が一気に伸びる一方、自律神経の発達がそれに追いつかないことがあり、起立性調節障害をもっとも発症しやすい年齢となります。
中学・高校生の20~30%が起立性調節障害をもつことがわかっており、けっしてめずらしい病気ではありません。
また、自律神経の働きには心理的なストレスが大きく影響するため、学業、部活、人間関係、思春期の体の変化など、多くのストレスにさらされる年頃で特に症状が悪化します。
症状が強い場合、学校への登校が難しくなることも多いです。
平日の朝に特に症状が強くなりやすく、逆に休日や昼以降に症状が軽くなりやすいことから、周囲の人から「怠けている」「頑張っていない」などの誤解から非難を受け、さらにそれが心理的ストレスとなって、ますます症状が悪くなり学校に行けなくなるという悪循環となります。
お子さんにこういった症状があれば、まずは症状のつらさに周囲の人(特に家族)が真摯に耳を傾け、理解することが大切です。
起立性調節障害の診断のためには、症状の内容の詳しい聴取に加えて、起立試験を行います。
起立試験とは、10分間ベッドで横になっているときの血圧・脈拍と、起き上がったあとの血圧・脈拍の変化を測定します。
血圧が急に下がったり、脈拍が極端に増えたりしている場合、起立性調節障害の可能性が高くなります。
また、他の重大な病気を否定することも大切です。
体のだるさは甲状腺の病気、頭痛や吐き気は頭の中の腫瘍や出血、ふらつきは心臓の不整脈などの重大な病気の初めに出現することもあるので、疑わしければ血液検査、画像検査、心電図検査などを行います。
治療は薬物治療(血圧を保つお薬や漢方薬)、生活療法が基本となります。
生活療法には、生活習慣の見直しや、本人を取り巻く環境を整えてストレスを減らすことが含まれます。
具体的には、以下のような見直し・調整を行います。
・水分・塩分を十分に摂るように心がける(水分は食事外で1日1.5~2L以上、塩分は普段より3g程度多く)
・寝た状態や座った状態から急に立ち上がらないように、30秒以上かけてゆっくりと起き上がるようにする
・睡眠不足にならないように(少なくとも8時間の睡眠時間を維持)
・朝食を含め食事は3食きっちり食べる(脳と胃腸の日内リズムを一定にする)
・平日も休日も就寝・起床時間を一定にして、日中はできるだけ横にならないようにする
・スマホやゲームなどのモニター時間が多くならないように(1時間ごとに20分の休憩を)
・学校の職員と情報を共有し、登校時間や登校方法の整備を
・しんどい朝は無理をせず、午後からや休日の体調が良いタイミングで、運動や勉強を頑張る
「なんだか様子がおかしいな」と感じたときには、遠慮なくご相談ください。
ではでは、今回はこのへんで。